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2008年7月28日 (月)

「花と濤」船山馨

久しぶりに船山馨の小説「花と濤」(はんとなみ)を読み返しました。この小説は「石狩平野」や「お登勢」等と並ぶ船山馨の代表作の一冊です。

物語は淡路島出身で阿波徳島の人形師「庄太」の悲恋の生涯をたどっています。

現在では文楽も一部の愛好者だけに限られて観賞されていますが、明治から昭和の初めに掛けては阿波や淡路地方更に大阪で大変人気が有り、大阪には「彦六座」を始めとする大きい小屋が沢山あって大変な賑わいを見せていました。

人形師と言うのは、そんな木偶人形(でこ)の頭(かしら)を作成する人の事を言います。私たちはテレビの文楽で時たま見る程度ですが、人形の頭はさながら生きた人のように時には、人間以上に表情豊かに舞台で演じる様は感動さえ覚えます。

庄太は淡路の人形師の子供で8歳の時に父親が亡くなり阿波の木偶人形師松島定蔵の元に住み込みます。その庄太の幾多の試練に打ち克ち名人となる修行の過程と定蔵の娘「夏江」に対する一生の愛がテーマとなっています。

時代は明治から昭和の始め頃に掛け、日清戦争、日ロ戦争、を挟み庄太や庄太の友達もへ兵役に招集され庄太は人形師の命とも言える右腕を失ってしまいます。

此の小説では、一貫してそれらの愚かな日本政府の侵略戦争への批判が貫いています。日ロ戦争では乃木希典の無能で誤った判断で大量の犠牲者を出してしまった事を痛烈に書いています。

此の小説の主人公は人形師の庄太ですが、船山さんは他の小説でも特に立派な女性を書くのが上手です。庄太に生涯を掛けて思われ、慕い続けられる夏江もそうですが、後で夏江の亭主になる料亭「花むら」の芳太郎の妹「京子」も魅力溢れる女性です。当時の女性としては珍しく進歩的な考えと行動で、絶えず明るく竹を割ったような性格で当時オッペケ節で有名になった川上音二郎一座にくっついて外国公演に着いて行ったりします。

船山馨さんは北海道真狩村の生まれで小学生の頃札幌に移り住みますが1937年北海タイムスに入社、その後東京に出てやはり新聞記者を経て小説家となります。1981年67歳で亡くなっています。

船山作品はどれもドラマチックで面白いです。今度は「石狩平野」を読むつもりです。

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